第26回レーベル病患者の会 議事録

開催日時:2023年10月8日(日曜日) 13時00分~16時30分

場所:東京ボランティア・市民活動センターB会議室


【出席者】
会場参加:患者本人12名・患者家族12名・ボランティア3名
     井上眼科病院名誉院長・目と心の相談室 若倉雅登先生
Zoom参加:患者本人7名・家族6名             合計41名

<事務局より>
神戸大学中村先生より、イデベノンを患者申出療養制度に申請しようと思っていると連絡があった。
この制度は、未承認薬を迅速に保険外使用できるように、困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、
先進的な医療について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で
迅速に受けられるようにするもの。
今回は製薬会社がパートナーとなるため、もしかしたらイデベノンを安価または無料で入手できるかもしれない。
本来は治験を行うものなので現在パートナー企業が、医師主導治験に協力してくれることになり、
中村先生のいる神戸大学が代表機関となり、日本神経眼科学会の事業としてできるだけ早期に治験を
開始できるようにすすめているところ。
これがうまくいったら保険承認になると考えているとのこと。
期間や基準はこれから詰めていくが、これまでイデベノンをのんだことのない人が対象になると思うので、
患者会の皆様でもご協力いただければとのこと。

<目と心の相談室の方より若倉先生のご紹介>
先生は北里大学病院・井上眼科病院で長年ご活躍後、目と心の相談室を開設。
相談室は来年10周年を迎える。
先生は長年神経眼科学会の会長もつとめられ、ご自身の専門性を高めてこられてきた。
今は、まぶしくて目を開けて生活できない人たちのため、残りの生涯をかけて尽力されている。

<若倉先生より>
この会が発足して13年くらいになる。
最初のころはよく顔を出していたが、レーベル病の治療の進歩の話もなかなかなく、だんだん行きにくくなってしまっていた。
コロナも落ち着いてきたので、本日久しぶりに参加することができた。
10/6より、東京国際フォーラムにて第77回日本臨床眼科学会が開催されていて、レーベル病に関する発表が5題あった。
井上眼科・筑波大学・日本医大・昭和大学・横浜市立大学、と、これまであまりレーベルの発表がなかった新顔も出てきている。
残念ながら治療に関する発表はなかったが、臨床的な学会なので、網膜中心静脈閉鎖症合併例・あまり典型的で
なかったレーベルの例、7歳女児学童の発症例など、診断のつきにくかったものの報告が多かった。
そこで問題になったひとつの大事なテーマは、変異遺伝子を持っていても発症しない人はたくさんいること、
女性は発症しにくいことなどである。
昔から言われているのは、アルコール・タバコ・外傷、視神経炎などの病気がきっかけになるもの、
それから最後まで視神経炎がよくならず中心暗点が残ってレーベルだとわかるというものもある。
たまたま病気の遺伝子があったが、網膜神経節細胞の代謝が落ちて、本来は発症しなかったかもしれないのに
他の病気が引き金になって発症することになったという話もあった。
もう一つのトリガーとして興味深いのが、山火事の起きた地域でレーベルがけっこう発症しているという話がある。
米国の有名な神経眼科医は、レーベルの家系の中でたくさんいる兄弟のうち消防士の人が発症しているのはなぜか
と思っていたが山火事と関係あるかもと考えたという。
火災の煙の中のシアン化合物、植物の中の杏子・梅・桃・アーモンドなどは燃えるとシアン化合物が出てくることがわかった。
元々遺伝子を持っている人がシアン化合物というもうひとつの要素が加わって、本来発症しなかったかもしれない人が
発症することになったのではないかという考察。
今後検討される興味深い内容であると思った。
7歳女児の件、エストロゲンが網膜神経節細胞の維持効果を持っていると示唆されているが、エストロゲンの
出始めるのが近年早熟になっていると言われているが、7歳はまだ出ていないため発症したかもといわれている。
女性はエストロゲンのおかげで発症しにくい、また、発症しても症状が激しくないと言われている。
診断についてもこの学会で話が出た。
ミトコンドリアDNAを調べる検査がまだ日本では保険収載されていないため、他の症例を区別しにくい。
医師は少しでも疑ったら検査をしたいが、今は自費検査で1~2万円かかってしまうため、医師がかなり疑わないと検査しにくい。
日本でも、医師側、患者会などで保険収載できるように働きかけていかなくてはならない。
医師よりもむしろ患者の声・一般市民の声の方が高まると厚労省や議員も動かざるを得ない部分もある。
その為、患者会の意味は大きい。
治療の話、2015年からヨーロッパではイデベノンがレーベル病の治療薬として認可されている。
効果はわずかによいかなという程度で、発症を抑制する力まではない。
新しい制度(患者申出療養制度)ができて乗っかれたらよいが、その制度もずっと続くわけではないので、
複数の医師が公費で治験をやろうという話を進めている。
公費でやれたら保険収載につながっていく。
イデベノンを作っている会社は治験に薬を提供すると言ってくれている。
欧米で進んでいる治験は11778変異を対象としている。
ND4という複合体の変異のため発症するが、その遺伝子のところに正常なたんぱく質を挿入するために、
病原性をなくしたアデノウイルスを使う。
眼球に直接注射する方法は網膜色素変性症でもすでにやっているので技術的には問題なく、局所的なので使いやすい。
正式な論文はまだ発表されていないが発症してから3年目までの例にやった研究では片目に正常な遺伝子を入れたのに
両目少し改善(0.04くらい)した例が50%という報告もある。
遺伝子を持っているが発症していない人の研究はまだ始まっていない。
片目が発症した時にもう片目の発症が抑えられるとよく、欧米では現在そんなところだが、日本にくるのは
早くて3年、ひどいと10年以上かかる。
製薬会社はもうからないとやらなく、日本は皆保険で薬価が抑えられている。
しかも症例数の少ないものはもうからないので、日本の企業でもアメリカや中国などのお金持ちのいる国へもっていってしまう。
日本は、保険制度は社会主義なのに医学の研究は民主主義の欧米の真似をしようとしているから齟齬がおこり
進みにくいという、日本のシステム上の問題で患者が恩恵を受けにくくなっているという話があった。
健康保険は良い面もあるが新しい技術や薬にはお金が出にくく、進歩の恩恵を受けにくい面があることは
皆さんにも知っておいていただければと思う。

<若倉先生への質疑応答>
・一時期iPS細胞が話題になったが、そちらでの治療はその後どうなっているか?
→ある先生のグループが研究をやっている。
 色素上皮の研究は進んでいて何例かの治験は行われている。
 色素上皮を移植して維持できればよし、というのが今の段階だが、よくならなければメディアはすぐ叩く。
 国民の科学に対する理解・度量というものも関係する。
 今やっているのは神経細胞ではなく上皮細胞のところの病気についてやっている段階である。
 レーベル病は神経細胞の疾患。
 iPSから神経細胞を作るところまではきているが、移植するまでにはいたっていない。
 仮にできても網膜の中で神経節細胞が生きているだけではだめで、脳に届かなくてはいけない。
 まず、脳の病気でiPS細胞の移植ができてそれが機能するのが第一段階、次が網膜の神経節細胞、
 それが脳に伝達するにはどうしたらよいか、古くなった視神経はつかえるのかどうか。
 その辺の研究はまったくゼロに近い状態なので、今のお子さんたちが老人になるころには何とかなっていればという感じ。

・慶応義塾大学が色変に対して夜盲の治験をしたが、これは桿体細胞のことだと思うが応用できないのか?
→レーベルは神経節細胞なので、桿体細胞のさらに上にいかないといけない。
 網膜の次の段階はまず色素上皮細胞かなと思っている。

・眼球に注射を打つ治療が海外でできているのなら、欧米に行けば治療を受けることは可能なのか?
→欧米はそういう治療は高額な自費になるが可能性はある。
 お金さえ出せばできるようになるかもしれない。

・アデノウィルスを使った治療はレーベルでもできるのか?
→今やっているのは、正常なND4をそのまま入れてもすぐなくなってしまうので、ウイルスにくっつけて神経節細胞の
 中にあるミトコンドリアまで行きつくようにしている。
 ウイルスは増殖力があるので運び屋として使っている。
 ただ感染して病気になってしまってはいけないので一朝一夕にはいかない。

・ステロイドをやらない方法でなにかあるか・
→そもそもレーベルにはストロイドは効果がない。
 視神経炎にはステロイドを使うが単独のレーベル病には無効ということははっきりしている。

・治験は11778対象かと思うが、それ以外の変異はやらないのか?
→11778はレーベルの80~90%なので、まずターゲットとしてこれをやっている。
 今やっている3つの薬が効果あるとわかれば他のミトコンドリア遺伝子変異のところをターゲットにしたものを
 やるのはそんなに難しくないのではと思っている。

・今の遺伝子治療は発症後長くたっている人にも有効なのか?
→今の研究では、発症後3~6年くらいと、ある程度限定したところでやっている。
 治験で認可されればそれ以外にも使える可能性が出てくると思うが、まずは治験でよい成績を出すために、
 発症から短い人を対象にしていると思う。


<会場参加者・Zoom参加者全員の自己紹介>
会場には、東京都・神奈川県・埼玉県・群馬県・茨城県・愛知県・岡山県・宮城県から、患者本人・家族がご参加。
うち初参加のご家族が1組。
Zoomでは、東京都・神奈川県・千葉県・静岡県・愛知県・山形県・兵庫県・奈良県・沖縄県から患者本人・家族がご参加。
うち初参加の方が3名。
それぞれの、発症時期・視力の現状・職業などについて簡単に自己紹介していただいた。


<新規メンバーの紹介>
〇Yさん(兵庫県)39歳・男性 妻がZoom参加
・今年9月中頃に診断がついた。5月に左目から発症し8月に右目が見えなくなった。本人はずっと落ち込んでいる。
 車を運転して仕事に行くことができなくなり休職している。
・見えていた時と見た目は変わりないので、周囲にどう伝えて理解してもらったらよいか。
・拡大読書器は手帳をもらえてから市からの補助がもらえると聞いた。
 手帳の申請のための診断書はいつ頃もらったらよいのか聞きたい。
・今、左0.02・右0.1だが、どんどん見えにくくなっているよう。

→メンバーより
・視力低下が進行しているときはなかなか診断書が書いてもらえなかったりする。
・拡大読書器について、自分の住んでいる県では、支援学校に相談したら少しの期間貸してもらうことができた。
 視力低下の進行により、拡大読書器では済まなくなることもあるので、最初は買わずに様子を見るとよいと思う。
・息子は学齢期に発症し最初は手帳を持っていない状態で、学校では拡大読書器を買ってもらったが家で使うものは
 ヤフオクで手に入れた。今ならメルカリもあると思う。
 PCやiPadなど、アップル系のものは特にアクセシビリティが優れているので、現在拡大読書器は使っていない。
 補助は7年に1回しか使えないので、急いで使わずに、お試し用にレンタルやヤフオク・メルカリなどを探してみることを勧める
・手帳の申請について、息子の時は早く手に入れた方が学校生活の配慮などしてもらいやすいからと
 いったん低い等級で申請し、後ほど1級を申請しなおした。
 症状固定しなくても診断書さえ書いてもらえば申請することもできるし、必要な時に等級を変えることもできる。
・東京都だと、ハローワークで拡大読書器のレンタルができ、半年×2回、職場で1年間借りて使った。
 1年後は会社の方で申請してPCトーカーと合わせて補助してもらうことができた。
・iPadミニに拡大鏡アプリを入れて拡大読書器がわりに使うという手もある。
・かかりつけ病院でロービジョン外来があれば色々紹介してもらえると思う。
・周囲の理解について、早い段階で白杖をもって見えづらいことをはっきりわかってもらうことにした。
 早くから白杖を持つとなれるのも早い。市区町村の福祉にも早めに相談した方がよい。
・兵庫県なら、神戸市のアイライト協会で色々な器具の使い方を教えてもらえる。
 アイセンター病院にもロービジョン外来がある。市独自の補助もある。
 子どもがレーベル病と分かった時点で申請したが補助が下りるまで時間がかかるのでなるべく早くした方がよさそう。
・職場で、うすく広くかかわる人には伝えることが難しく仕事もやりにくいと思うことがあるが、
 近い上司などには見え方や日常の中で困ることを整理して伝えるとよいと思う。
 今は仕事では紙媒体で見ることが少なくなってPCの中で文書を見ることが多いと思うので、
 本人の仕事のやりかたにより、拡大読書器が必要か確認することがよいと思う。
 音声PCやスクリーンリーダーなどのことも覚えておくとよいと思う。

〇Nさん(兵庫県)25歳・男性
・今年5月に眼の病気になり、眼が痛くなり東海大学病院を受診した。近くしか見えず遠くは見えない。
 大きい文字しか見えない。右が0.1・左は失明。8月に北里大学病院でレーベル病の遺伝子検査をし、
 10月に入り結果が出てレーベル病は否定され視神経炎といわれた。
→レーベル病では視力0.01とか手動弁で中心暗点もあり細かいものが見えず人の顔がわからないという状態の人が多い。
 この会ではなかなか共有できることが少ないので、次回診察時に今の見え方など相談できるとよいと思う。

〇Nさん(奈良県)67歳・男性
・視力は左右0.01。60歳まで病院で理学療法士として勤務していた。60歳手前で、むせるのを我慢していたら
 意識消失して倒れ、迷走神経反射といわれたが、その翌日から急激に視力が落ちていった。
 きばると眼圧があがり視力がますます低下するので、きばらないように、むせを我慢したり便秘にならないようにいわれた。
 視力が悪くなってから、近所は杖なしで歩けるが遠くに出かけるときは杖を持って出かけている。
 天理よろず病院でレーベルの診断を受けた。定年退職後も仕事はしている。家族もいて孫もいる。
 人生最後のステージを楽しんでいる。

<その他フリートーク>
・周囲への自分の見え方の説明については苦労している。
 さっさと歩いているのに文字を読むのはできないのかとか言われると、ジグソーパズルで真ん中の数ピースが
 なくても全体の想像はできるが真ん中がわからないと困ることもある、と説明している。
 歩くときは、小石一つ見えなくても何となく歩けるし、米粒のひとつひとつが見えなくても何となく
 ご飯を食べることはできると伝えている。
 自分は白杖を持っていないがヘルプマークを付けている。地下鉄駅の窓口などで手帳を見せなくてももらえる。
 ヘルプマークはだいぶ認知度が上がってきていると思う。

・見え方アプリというのがある。中心暗点の見え方とかがわかってもらいやすい。何種類かあるので検索してみてほしい。

・アイナビというアプリを使っている。信号の色も教えてくれる。

・まだ発症していない者が飲めばよいような予防薬はないだろうか?
→・過度の飲酒・喫煙・シンナーをやらないことが基本的予防。
 ・発症当初ビタミンC・ブルーベリーアイなどかなり飲んだが効果はなかった。
 ・飲酒・喫煙をしない子どもの発症もあるので、必ずしも禁酒・禁煙がリスク回避になるとも言えない。
  コエンザイムQ10は発症した時にミトコンドリアの酸化ストレスを下げると言われているが発症前の予防効果はわからない。

・目の痛みの対処方法はあるか?
→レーベル病は目の痛みの出ない病気。ここでは共有しにくいので後日相談室で。

・発症して8年くらいたつが今も少しずつ見え方が悪くなり続けている感じがする。
→この病気はその日の天気や体調により結構見え方が違うことはあると思う。
 まぶしさによりコントラストが悪くなり見えにくくなることもある。
 色付きのグラスを使うことを相談してみるのもよいと思う。
・発症して10年になるが、最初レーベルとわからず、視神経炎といわれパルス療法もやったがなおらなかった。
 高圧酸素療法もやったが、どんどんみえなくなった。見えなくなる時というのは急激なものだった。
 毎朝悪くなっているので怖く、毎朝同じカレンダーを見て、今日は大丈夫・今日は大丈夫と繰り返していた。
 視力が悪くなってからは、行動の慣れでカバーしている感じである。
・見えなくなってからしばらく国リハでロービジョンケアを受け、見え方の訓練もやった。
 そういう訓練を受けてみるのもよいと思う。

・神戸大学の電気治療治験にエントリーしていたが選ばれなかった。受けた人がいれば効果をきいてみたい。
→本日の参加者の中には該当者なし。

・職場で使うPCはどのようなものがよいか?
→・24インチで4Kタイプのモニターを使用。それより大きいモニターを使っている人もいるが、別室で仕事をしている。
  他の人と一緒のオフィスの中では24インチくらいかなと思う。
 ・24インチのモニターを使っているが、スクリーンリーダーを併用している。
 ・ジャストシステムの一太郎の中の詠太という読み上げソフトを使っている。詠太は文節ごとに巻き戻して聴けるので便利。
・27インチのモニターで拡大鏡を使っている。これ以上大きくなると画面を見るのも大変になると思う。

・TVが見えにくい
→いったん録画して、画面の文字を読みたいときなど必要時一時停止して見ている。
 副音声・字幕の翻訳もテレビ局によってちがう。ラジオの方がよいと思うことも多い。

以上です

 

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